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久留米大学医学部先端イメージング研究センター 太田 啓介先生

Kurume University

100万分の1の世界。
最先端技術を用いた細胞の構造解析

Ohta Keisuke

太田 啓介 先生

久留米大学医学部先端イメージング研究センター教授

ミトコンドリアから組織まで、身体の構造を研究する太田先生の研究室を紹介

細胞の中にある小さなミトコンドリアが人間の身体の中でどういう役割を持っているのか、電子顕微鏡と光学顕微鏡、両方を行き来する最先端技術を用いて身体の構造を解き明かしていく太田先生。
最新技術を開発して研究を進めていく面白さや人間の身体を構成する細胞たちの姿について話を伺いました。

―太田先生の研究内容について教えてください。

僕の研究内容は三次元でみる新しい形態学です。
我々の身体というのはたくさんの細胞でできているのですが、病気が起きた場合、お医者さんは人間の身体や心臓が動いているかなど眼や耳で診ることもあれば、顕微鏡で細胞一個一個を確認したり、タンパク質同士の構造がどうなっているかというところまで考えます。
僕らの目的は、そのタンパク質が「どうやって組み合わさって我々の身体を作っているのかを明らかにしたい!」というものです。
研究には色々なアプローチの仕方がありますが、僕らは主にミトコンドリアの形をキーワードに研究を行っています。
ミトコンドリアというのはすべての細胞の中にある小さな器官で、遠い昔に細胞の外からやってきた別の生き物に由来すると考えられています。独自の遺伝子を持っていて、我々の身体の中で僕らが生きていけるようエネルギーを作っています。
エネルギーを作っている現場はミトコンドリアの中の更に細かい構造ですが、これがどんな構造をしているかというのは今まで正確に見ることができませんでした。それを3次元的に見られるようにしたのが僕らの技術です。
使うのは髪の毛にも字を書くこともできる微細加工技術です。

この技術を使って試料をナノメーター単位で少しずつ削って観察すれば、やがて立体図になりますよね?このデータをもとに3次元再構築して、我々の身体の細かいところがどうなっているのかを調べているんです。

ミトコンドリアは細胞の中で動き回り、ちぎれたり、くっついたりを繰り返すことで機能を維持していると考えられています。彼らのダイナミックな動きには様々な分子が関わっていて、その多くが解明されてきています。しかし、その分子が働く「場」が本当はどうなっているのか、実はあまり判っていないのが現状です。その場の大きさはナノメートルレベルですので、電子顕微鏡じゃないと見ることはできません。でも、電子顕微鏡は真空中で観察しなければならないため、変化している過程を見ることができません。分子が働く「場」が重要であるにもかかわらず、理解が進んでいないのは、こんな技術的な点も1つの原因なんです。そこで僕らは光学顕微鏡で観察した細胞の「場」の瞬間を電子顕微鏡で観察することができる「3D光-電子相関顕微鏡法」という方法を開発しました。
この方法であれば変化している過程の瞬間を見ることができます。
私たちは、この方法を使って、古くからミトコンドリアの分裂誘導に使われてきた実験モデルを詳細に検証しました。その結果、そのモデルで起こる現象はミトコンドリアの分裂とは全く異なるしくみによって起こることを発見し、ある意味、これまでの研究を“ちゃぶ台返し”してしまうことができたと思っています。(この論文は世界的で有名なScience Report誌の2018年TOP100に選ばれました。)
このような技術は純粋な基礎研究だけで無く、産業とも相性が良いため、積極的に産学協同の研究も行っています。たとえば「陶器の上で細菌がどうやって生えているのか?どうやってくっついているのか?」とか「新開発の化粧品を塗ると皮膚の色素細胞はどう変化するのか」など、商品開発に関わる疑問はいくらでもでて来ます。後者はKOSEさんとの共同研究で美白化粧品の開発にも携わることができました。こういうところで産業にも役立つ仕事をさせていただいております。

―研究室について教えてください

基本的にうちの研究室は自由で、みなさんとても楽しく仕事されていると思います。
僕自身は技術端に近いので、新しいテクニックを開発するのが好きです。もちろん技術開発をしたい人も大歓迎ですが、その技術を見て自分の問題を解決できるのでは?と考えてやってくる方も多いです。とくに臨床の先生は自らの問題をしっかりと持っておられます。
例えば、腱(けん)です。筋肉と骨をつなぐ腱はとても強く両者をつないでいますが、なぜあれだけの力が出るのかはわかっていません。また、けがをして切れてしまった腱は手術で再建しますが、残念ながらもとの腱ほど強くはありません。なぜなのか?それを詳しく調べて将来の医療に役立てようといったような研究を行っております。
もちろん方法論は僕らが指導できます。でも「自分が見たいものを見る」というのが大事だと思っていて、誰かに押し付けられたと思っている仕事は長続きしません。予備用のテーマとしてこちらから課題を準備することもありますが、たとえ芽が出なかったとしても自分が興味のあることを一生懸命やって欲しいですね。
大学院生で入ってきて研究をやるというときには、自分が興味のあることから初めて、相談や修正をかけながら突っ込んでいって、思い悩みながら「何とかしてものにする」という過程が大切で、その時感じたことが、将来の仕事の立ち位置に繋がると思っています。
これは僕自身もやってきたことなので、是非そうして欲しいなと思います。

―研究を通じて学生に教えたいことは?

自分で問題点を見つけ、とことん調べていく能力、いわゆる「リサーチマインド」を身につけて欲しいです。医学部ですと、将来は医師になる方がほとんどです。彼らにとっても「リサーチマインド」を持っていることはすごく重要で患者さんを助けることにも繋がります。
実は僕自身がその実例でもあり、久留米大学の先生方のリサーチマインドに命を助けてもらった経験があります。若い頃、どこで調べてもらっても「一生付き合っていくしかない」と言われていた病気を持っていましたが、久留米大学に来てから2ヶ月間、とことん調べてもらった結果、比較的最近になって解ってきた病気であったことが判明し、完治に繋がりました。それは、担当いただいたチームが新しい病気に関し、常に研究心をもって診療に当たっていたからに他なりません。
お医者さんになるにも、またそれ以外の仕事に就く場合でも自分で問題意識を持ち、調べ、突破していく能力というのは絶対必要なので、ぜひ研究をして欲しいと思います。

―久留米大学の魅力は?

医師としての人間性を育てる凄く良い大学だと思います。
久留米大学は、病院長、クリニックの院長の数がダントツで日本一だそうです。
関東の有名大学のどこよりも多いそうです。その理由はいろいろだと思いますが、学生には現在もお医者さんのご子息が多くおられますし、親権者の付託に答えられるようと大学全体で取り組んで来られた先人の努力の結果の一つと思っています。
また現在、素晴らしい学生達に恵まれていることも久留米大学の大きな魅力で、学生間の雰囲気も良好です。
教育システムとしても比較的柔軟性がある学校で、最近は「協同学習」という心理学に基づいた教育の仕組みを取り入れています。大学入学までは競争ですが、大学に入ってからは「仲間と共に高め合う」スタイルに転換を図ろうと動いています。これは医師を目指す人たちにとって知識や技能と同様に極めて重要な心のスキルなんです。
久留米大学では実際に協同学習という単元を作っており、私が担当する組織学実習もその仕組みを組み入れ、自らが仲間と共に学んでいけるよう取り組んでいます。このように、知識だけで無く学生達の人間的成長を目指して大学挙げて積極的に動いているのも魅力の一つですね。

―高校生へ伝えたいことは?

自律する。物事の選択を自分で決められるようになってほしいです。
高校や大学の受験というのは、レールが引かれています。
最近は、予備校もしっかりしていますし、予備校→大学→就職といった決まったレールに乗っかっておけばある程度いけるようなスタイルになっています。医学部でもレールが引かれていて、それなりに学び、医師になることもできるかもしれません。でもそのスタンスだと、納得いかないときに人のせいにすることも多くなると思います。
一方、自律することで自らの責任の範疇で行動するようになります。それなりに責任を伴うため、勉強しなければなりませんし、余計な苦労も多いかもしれません。しかしリセットの効かない一回きりの人生、自分で選択することでより有意義に過ごせるようになると思います。
どの分野に行くにも必要ですので、いつ気付くかという問題なのかもしれません。ぜひ若い時代から自分で考えて、自分で切り開いていく人生を歩みはじめてほしいですね。
しっかり自分の考えを持って、自分を律して、果敢に遊んでください。

研究室の先輩たちの主な進路先

医学部、研究所、理研

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