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筑波大学 准教授 外山美樹様

経歴

筑波大学心理学系助手、日本学術振興会特別研究員などを経て、2008年に筑波大学人間総合科学研究科准教授。
2012年4月より現職。専門領域は教育心理学。

先生の専門領域について教えてください。

一般的に心理学というとカウンセリングのイメージが強いのですが、人間の心と行動に関わるすべてのことが研究対象になる学問です。扱う領域は幅広く、私の場合、小学生から大学生を対象とした教育心理学を専門としています。主に取り組んでいるのは、学業などのパフォーマンスを高めるための動機づけや、自己認知に関わる研究です。動機づけとは、勉強のモチベーションを上げるにはどうしたらいいのか、無気力になるのはなぜなのか、試験で力を発揮するにはどうしたらいいのかといった研究です。自己認知は、自分のことを自分でとう捉えているのかということ。そうした自己認知がパフォーマンスや精神的な健康にどのような影響を及ぼすのかについて、研究しています。

先生が取り組まれている研究テーマについて、お聞かせください。

私が力を入れている研究のなかに、「友人や教師などとの関係が、児童・生徒・学生のモチベーションにどのような影響を及ぼすのか」というテーマがあります。身近に優れた友人がいるとしましょう。その友人と自分の能力を比較して自分の現状を認識することによって「私もその友人のようになりたい」とモチベーションが上がり、結果的に学業成績などのパフォーマンスが向上する人がいます。その一方で、優れた友人と接していて自分のふがいなさを感じて意気消沈してしまってモチベーションが低下し、パフォーマンスも下がってしまう人がいます。こうした現象がなぜ起きてしまうのか、そのメカニズムを研究しています。

具体的にはどのような研究でしょうか。

自分が置かれている集団から影響を受ける、「井の中の蛙効果」についての研究を例に挙げてお話します。
AさんとBさんという中学生がいるとします。2人の学業成績はほぼ同じレベルでした。ところが、Aさんはレベルの高い高校に進学したのに対し、Bさんは受験で失敗してしまい、レベルがそれほど高くない高校に入学することになりました。とすると、Aさんの方がよかったと思えるでしょう。しかし、入学後にどうなったのかを調査したところ、Aさんは優秀な生徒が集まる高校の中で、優れた友人たちと自分を比較することになり、”自分は勉強ができない”と思ってしまいました。一方、Bさんは勉強があまりできない生徒たちがいる高校の中で、学業レベルが高くない友人たちと自分を比較して、”自分はできる”と思いました。このような自己認知の違いが、勉強に対するモチベーションに影響を及ぼしました。Aさんはやる気を失い、悪い成績しかあげることができなかったのです。逆にBさんはやる気が湧いてきて頑張って勉強し、いつも成績は上位でした。その結果、Aさんも受けた全国統一模擬テストでは、Aさんより高い成績を収めることになったのです。
このように学業レベルの低い集団に属すると、”自分は周囲の人たちよりもできる”と認識しやすくなり、心理学では”大きな池の小さな蛙になるよりも、小さな池の大きな蛙になる方が成果を出せる可能性がある”ということで、「井の中の蛙効果」と呼ばれています。こうした「井の中の蛙効果」の現象をさまざまな角度から研究し、Aさんのように井の中の蛙になれなかった人がいかにモチベーションを上げていくかについても探求しています。

弊社のサポートはいかがでしょうか。

研究には、さまざまな実験や綿密な調査、膨大なデータの分析などが必要です。それには常に素早く作動し、快適に操作できるコンピュータの存在は不可欠なので、アプライドさんのきめ細やかなサポートには感謝しています。担当営業の大林さんはパソコンの導入やメンテナンスなどでしばしば筑波大学にいらしていて、他の研究室に寄ったついでに私のところにも顔を出してくださいます。「困っていることはありませんか?」とたずねてきてくれるので、気軽に相談できて助かっています。アプライドさんには研究室のホームページもつくっていただきました。

今後の展望をお聞かせください。

近年は教育現場にも情報通信技術(ICT)の導入が進み、学習のあり方が変わっています。紙の教科書ではなく、ネットやタブレットなどを使う時代になってきているので、そのような環境で児童・生徒・学生たちが勉強へのモチベーションをどう高めていくのか、研究を深めていきたいと考えています。自学自習しやすいようないデジタル教材も数多く開発されているので、より個人に合ったモチベーションの高め方を探求していけるのではないかと思います。

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