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京都大学 講師 水原 啓暁 様

2002年山口大学大学院理工学研究科博士後期課程期間短縮修了、博士(工学)。同年4月理化学研究所脳科学総合研究センター研究員、2005年9月岡山大学大学院自然科学研究科講師を経て,2007年4月より京都大学大学院情報学研究科講師。

先生が取り組まれている研究はどんな内容でしょうか?

今取り組んでいるのは、脳波キャップを使って脳から発生している電気を測り、コミュニケーションをするときに脳がどういう働きをするのかを解明する研究をしています。もっと簡単に言えば、脳がどういう働きをすればうまくコミュニケーションができるのかという研究です。話している言葉と脳波がシンクロするとコミュニケーションはうまくいき、シンクロしないとコミュニケーションがうまくいかないということが分かり始めています。
脳のメカニズムを解明することは基礎研究として行っていますが、自閉症や統合失調症などのコミュニケーションを苦手に感じる人たちの理解の助けにもなるだろうと思っています。

そのほかに取り組んでいらっしゃることはありますか?

そのほか、脳の働きを詳しく調べるための方法も開発しています。MRIを使って脳の画像を撮って、脳活動を調べるという研究も併用しています。脳波キャップをかぶり電気を測定しながら、脳の状態をMRIで調べます。同時に測ることで、より詳しく脳を調べることができるようになります。脳の速い活動がどこで起きているかを調べることができるようになり、いろいろな分野に応用ができるようになります。これまでに、例えば、計算しているときやイメージしているとき、コミュニケーションしているときの脳の状態を調べています。

研究室ではどんな実験などが行われているのですか?

脳波はとても微弱な電気を測っているため、電磁波が邪魔になります。研究室では防音も兼ねた電磁波を遮断するシールドルームで実験を行います。例えば、物語を聞いたときに、われわれは脳の中でどうやって物語を理解しているのかを実験しています。シールドルーム内には椅子とモニターが設置されています。被験者が座り、モニターの映像を見たり音を聞いているときの脳波を測るという実験をしています。
最近は、短い小説のナレーションを聞いているときの脳波活動を測り、その物語をどうやってひとつの物語として認識しているのかを調べています。言葉というのは、単語があり、文章があり、文章の繋がりがあって物語を理解しているのですが、どうやって脳の中で実現しているのかを研究しています。
自分たちが当たり前と思っていることを、どのように脳が認識して実現しているのかの仕組みを調べています。ほかには、腹話術をどうやって認識しているのかも調べました。プロの腹話術師は、人形の口を動かしながら話すのですが、人形が動くことで見ている人は人形の口に注視します。でもこの注意ってすぐに逸れてしまうのですね。上手な腹話術師は人形のほうを向くことで、人の注目を人形へ向けることができます。これは腹話術効果と言って昔から知られている現象なのですが、視覚情報と聴覚情報がどうやって統合されるのかという問いです。この問いについて脳波を使って解明する研究です。ものが動くと音を処理するための脳波が少しズレます。そのタイミングで音が入ると、別の方から音が鳴ったと脳が勘違いしてしまいます。

弊社のワークステーションをどのように活用されていますか?

ふたつありまして、ひとつはデータ処理です。脳波キャップの一つひとつが計測点になっていて、全部で64個あります。1個につき1秒間に5000回、64個で数分間だと莫大なデータ量を処理しなければなりません。ワークステーションを使うとサクッとできます。 以前は1週間や2週間ずっとパソコンを回しっぱなしでしたが、ワークステーションなら時間を短縮できます。各段にスピードアップしているので、助かってます。 もうひとつはAI。脳の研究のツールとして自然言語処理を使っているのですが、自然言語処理のためのニューラルネットワークを学習させる際にワークステーションが活躍してくれます。
パッと買ってきて、パッと使えるのが最大のメリットですね。

飛躍的に使いやすくなったパソコンで今後取り組んでいきたい研究などはありますか?

今、まさに取り組んでいるのですが、AIと脳の解析は、どんどん融合していくと思っています。今後は、そこに力を入れられればと思っています。

 

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