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明治大学  専任教授 井口 幸洋 様

1987年、明治大学工学研究科電気工学博士課程修了、工学博士。明治大学理工学部専任講師を経て、2000年に助教授。2001年に武田研究奨励賞・最優秀研究賞を受賞(笹尾勤教授との共同)。2008年より、明治大学理工学部教授。専門分野は計算機アーキテクチャ、VLSI計算機支援設計、理論設計。

先生の研究について、概要を教えてください。

学生時代からコンピュータの理論設計の研究に取り組み、40年余りになります。今は理論設計の研究を継続しながらも、ロジックを活かしてコンピュータの新しい応用をつくることに主眼を置いています。
私の場合、笹尾勤先生という優れた研究者と共同で研究を行っていることもお伝えしたいと思います。笹尾先生は長らく九州工業大学の教授をつとめられ、約25年前、私が私学研修員として九工大で研鑽を積んでいたときにご指導いただいた恩師でもあります。2013年に明治大学教授に着任してからは「井口・笹尾研究室」として合同で研究室を運営してきました。論理設計やスイッチング理論、論理回路の複雑度解析、パターンマッチングといった分野で多くの実績があり、今も研究意欲が旺盛な笹尾先生です。これからもご一緒に研究を続けていきたいと考えています。

研究室では、どんな研究に取り組んできたのでしょう?

研究室の学生さんは理論設計にとどまらず、AI技術、機械学習など、さまざまな興味をもっているので、学生さんの希望やアイデアを取り入れています。研究分野はデータマイニングや、ハードウェア・ソフトウェアのシステム開発など幅広く、その中から過去の事例をいくつかご紹介します。
まず、データマイニングです。データマイニングとは、膨大な量のデータを集め、統計学やAI技術、パターン認識技術などの解析技法を使って、そこに潜む規則性や相関関係などを解き明かすという手法です。私の研究室では、キャンパスのある川崎市の不動産情報、日経平均株価の予想システムの作成、中古車販売のデータマイニングなど、学生主導で研究を行いました。中でも興味深い研究が、ブラック企業・ホワイト企業判定システムです。女性従業員の比率、3年離職率など、企業のデータを大量に集めて解析し、その結果からブラックやホワイトと呼ばれる企業の特徴を調べ出すことができました。そして、ネット上でブラックかホワイトか、判定するシステムを開発しました。解決すべき問題が多いため、この判定システムは公開せずに開発を終えましたが、学生さんにとって就職先選びは切実な問題ですので、価値のある研究だったと思います。

電動カートの研究の一環で、レースにも出場しているのですね。

システム開発の分野では過去、一人暮らしの高齢者の安否確認システム、SNSでの問題発言発見システム、流星観測システムの開発などさまざまな研究を行ってきました。
ここ数年、車が好きな学生が中心になって取り組んでいるのが、EVカート(電動カート)の研究です。モータの性能やコイルの巻き方、制御プログラムの改良を重ねてEVミニカートを制作し、毎年、サーキットで開催されるレースに出場しています。2019年夏に千葉県袖ケ浦フォレストレースウェイで開かれた「CQ EVミニカート・レース」では、総合部門4位でしたが、学生部門では1位になり、表彰されました。学生さんたちは総合部門でも勝ちたいということで、走行練習をしたり、ラップをはかったりと、頑張っているのです。私もチーム監督として、学生さんと一緒に、楽しく上位入賞を目指していますよ。

先生の研究にワークステーションはどう役立っているのでしょう。

私がコンピュータに求めることは「信頼性が高いこと」です。つまり、壊れたりせず、安定して動くこと。システムの開発などでは1週間ぐらい動かすことは頻繁にあり、100日間連続して動かす場合もあります。そんなとき、途中でコンピュータが止まってしまうと、計算を最初からやり直さなければいけないので、研究の進捗が遅れてしまうことにもなるのです。
アプライド製品は高性能で、長時間、安定して動いてくれるので、信頼性が高く、研究には必要不可欠です。また、営業担当者さんのサポート内容も「信頼性」に結びついています。不具合があれば迅速に対応してもらえるし、私からの「こういう機能を搭載した製品があると助かる」といった相談にも適切な情報を提供してもらえるので、ありがたいですね。

今後、力を入れていきたい研究について、教えてください。

今、注目のAIですが、AIによる知的なデータ処理をやろうとすると、電力の消費が大きくなってしまうという問題があります。そこで、消費電力を低減させ、かつ価格も安価なデバイスをつくり出すべく、研究に着手しています。名付けて「知的デバイス」。笹尾先生とともに、研究・開発に力を注いでいきたいです。

 

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