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久留米大学医学部看護学科 原 頼子先生

Kurume University

患者さんに寄り添う看護!
がん看護における患者中心の支援とは

Hara Yoriko

原 頼子 先生

久留米大学医学部看護学科。

長年の自己管理が必要な患者さんをサポートする原先生の研究室を紹介

 がん患者さんとの寄り添い方を日々追求する中で、最近は、シナリオベースのシミュレーションを駆使し、支援方法を考えることを通して看護師を目指す学生を育成している原先生。
 がん看護のあり方とは何なのか、患者さんをサポートする上でどんな課題があるのか、人間の生死に直接関わることの多い先生の研究について話を伺いました。

―原先生の研究内容について教えてください。

 私の専門は慢性期看護で、研究内容はがんや糖尿病患者さんの生活の質(QOL)向上に向けた支援方法を考えることです。
 慢性病を持つ患者さんは、病気を持ちながら、長年にわたる自己管理が必要です。それはとても根気がいることですが、自分で管理することの大切さに気づかれた患者さんは、病気とうまく付き合っていくことができています。がん患者さんもサバイバー(病気からの生還者)という考え方で、生活の中に治療を組み込み、住み慣れた自宅で過ごしながら上手く生きていらっしゃいます。

 そのように病気を持ちながらも、自分の考えに基づいて自分らしく暮らすことはとても意味があります。病気のせいで自分らしく暮らせないことがないように寄り添い、自然な形でお話を聴かせていただき、何かあったらすぐに手を貸すことができるためにはどうしたらいいかについて考えています。

 看護にはケアリングという概念がありますが、それは患者さんの立場に立たなければできません。がんや糖尿病の患者さんはとても様々な苦痛を抱えて、死の恐怖も感じておられます。だからこそ自分の生活を基盤にし、その人らしさをとても大切にされています。その方たちをケアするということは、こころに届くケアでなければ必要とされませんし、実施する意味がありません。それはとても高度な技が必要であり、一朝一夕に習得できることではありません。

 私の最近の研究は、看護実践の中にある知を解き明かすために、エキスパートの看護師さんを観察しながら、患者さんに実施された看護を観察し、その動きをすべて書き出し、看護師が行ったどんな看護が患者にとって良かったのか、その時に看護師は何を考えて行っていたのかをインタビューし、両方を擦りあわせて分析しました。そういうことを繰り返しながら、看護という「こころにはしっくりきても、なんだか表現しにくい内容」を人にわかりやすく語れること、記述できること、人に納得してもらえる看護を伝えることを目標に研究を行っています。

 より良い実践には、医学的な知識はもちろんですが、広く人間を理解する知識が必要と考えます。私は新人時代の手術室の経験から、身体や病気の仕組み、なぜその治療が必要なのか、どのような手術が有効なのかをとても勉強しました。そこから、根拠のある看護を実践することの大切さが身についたと思っています。

 頭の中で考えたその人らしさを尊重した看護内容は、即実践に移せるかとなるとまた困難です。それには看護師経験に基づく豊かな実践が必要です。しかし、看護学生が臨床の場に出向き患者さんを受け持つ臨床実習では、豊かな実践ができる看護師同様に、看護学生にも同じようなケアが求められることもあります。

 そこで、実習準備のための看護演習が必要になりますが、実践経験が少ない学生には具体的なイメージ不足で、リアル感が伴わない演習で終わることもあり、実習時の看護に積極的になれないということが起こります。患者中心の看護の意味を理解し、自らやりたいと思えるようなリアルな演習を行うためにどうしたら良いのか、試行錯誤の上でたどり着いたのがシミュレーション教育でした。もちろん本当のケアをすぐに提供できることはとても看護の質が高いことになりますが、それにより近づくための方法です。

 音声機能付きの高機能のシミュレーターを相手にシチュエーションベイスド・トレーニングという方法で行います。熱が高い、血圧が高いなどの状況設定をして、その時の患者さんの気持ちやつらさを予測し、ケアを実施しています。そして、ここでは患者へ迷惑をかけるかもという心配は発生しないので、たくさん失敗体験をすることが大切で、その失敗体験を振り返り、自分は何を意図して関わったのか、その時どこで実施したことによって何が起こっていたのか、どうすればより良い実践になるのか、思考を深めます。それがケアの質向上にはとても意味があります。特に人生経験の少ない現代の大学生は患者さんとコミュニケーションを取ることがとても難しく、その前に十分練習し、自信を持って実習に向かうことは自信に繋がります。

 その教育方法は、大学院でのがん看護の上級看護実践を行うがん看護専門看護師という資格を取る課程にも取り入れています。この課程では上級実践ならではのシミュレーション教育を目指し、多職種間で地域連携を行い、患者さんの家族が求めている自宅で自分らしく暮らすことを支援するケアに繋げることを目標にします。そこで磨いた技をもとに実習では患者さんの傍に添わせていただき、必要なお世話を行っています。

―研究室について教えてください

私の研究室では、学院医学研究科修士課程看護学専攻課程でがん看護専門看護師の養成をしています。
クリニカルスキルトレーニングセンターができてからは、実習前教育に具体性を加えることができ、実践力の向上にとても役立っています。ここでは医師や様々な医療職が訓練をしていますので、多職種の連携を目的とした教育もできます。
九州内からの入学生が多く、久留米大学病院にも3名のがん看護専門看護師を輩出しています。

―研究を通じて学生に教えたいことは?

看護の技を追求して、患者さんの本当に求めるケアを実践できるように、日々努力を惜しまず学生にその方法を教えていきたいです。
がん患者さんには、「こころ」と「からだ」の両面からのケアが必要です。そこで、看護の技術力が向上すると自信となり、こころのケアを豊かにしてくれます。そこで、早期から効果的に技術力を向上させる方法が修得できれば経験重視の看護教育にとっては強い基盤となり、患者に信頼される看護師を送り出していけることにつながると考えています。

―久留米大学の魅力は?

久留米大学医学部看護学科は、西日本の私立看護系大学で一番先にできた看護学科で、26年の歴史を刻んでいます。
卒業した先輩たちは、今臨床の場で専門的な実践を行ったり、教育の現場に入ったり、管理職となったりと様々な看護領域で活躍してくれています。先輩との距離も近いですし、職員が学生の近くで寄り添いながらきめ細かに教育しているのが魅力ですね。
また、久留米大学病院という高度救命救急体制の整った地域診療連携拠点病院の役割も果たす病院で実習できることは実践力の向上にはとても有意義です。
これを読んでいる皆さんもぜひ久留米大学で学びませんか?

―高校生へ伝えたいことは?

色々なことに興味を持って豊かに生きることの本質を理解しようとしっかり学びを深めていってほしいです。高校生の時から将来の自分の姿を見据えて学ぶことは大切です。
看護という人の生死に向き合わなければならない職業はときに辛いこともありますが、患者さんの回復を見るときにはとても喜びを感じます。
人と人との関係性を築くためには様々な知識の引き出しが必要ですので、学生時代こそ色々なことをやって欲しいですね。

研究室の先輩たちの主な進路先

久留米大学病院、九州大学病院、福岡大学病院、国立がんセンター中央病院、慶應義塾大学病院、順天堂医院

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